奨学金の返済シミュレーション|親子で確認する総返済額の計算方法

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「奨学金って、結局いくら返すことになるんだろう」——借りている最中は、この実感が薄いまま毎月を過ごしてしまいがちです。

日本学生支援機構(JASSO)の奨学金は、第一種(無利子)と第二種(有利子)があり、特に第二種を利用する場合は、卒業後何年にもわたって利息を含めた返済が続きます。近年は市場金利の上昇にともない、奨学金の貸与利率も上がってきており、思っていたより利息が多かったと感じるケースも出てきています。

この記事では、奨学金の総返済額をどう計算すればよいか、親子で確認できる具体的なシミュレーション方法をわかりやすく解説します。読み終える頃には、借りたらいくら返すことになるのかをご自身で試算できるようになっているはずです。

奨学金の返済シミュレーションを親子でやるべき理由

奨学金は進学のための心強い味方という点はその通りですが、忘れてはいけないのは、貸与型の奨学金は将来、子ども自身が返していくお金だという点です。

ここでは、なぜ借りる前・借りている最中から返済シミュレーションをしておくべきなのか、その理由を整理していきます。

「借りたら終わり」では済まない奨学金の現実

奨学金のおかげで、無事に大学に通えたというところで安心してしまうと、卒業後に思わぬ負担に直面することがあります。

貸与型の奨学金は、給付型とは異なり、卒業後に本人が返済する義務のあるお金です。特に有利子の第二種奨学金を利用する場合、借りた元本に加えて、利息も含めた金額を返していくことになります。奨学金をもらったという感覚のまま社会人になると、初任給から返済額が差し引かれる現実に直面したとき、想像以上の負担に感じてしまうことがあります。

借りている最中からこれは将来自分が返すお金だという感覚を持てているかどうかで、卒業後の受け止め方は大きく変わります。だからこそ、借りている段階で総返済額を具体的な数字として確認しておくことに意味があります。

返済開始は卒業直後——子どもが直面する経済的プレッシャー

社会人になったら、少し余裕ができてから返済を考えようと思っていても、奨学金の返済は待ってくれません。

JASSOの貸与型奨学金は、貸与終了(多くの場合は卒業)から一定の据置期間を経て、卒業した年の秋頃から返済が始まります。新社会人としての生活が始まったばかりで、収入もまだ安定しない時期に、毎月の返済が重なってくることになります。

  • 初任給からの家賃・生活費のやりくりに加えて、奨学金の返済も同時に始まる
  • 就職先が決まらない、あるいは収入が予定より少ない場合でも、返済期日は原則として到来する
  • 返済が難しい場合は「減額返還」や「返還期限猶予」といった制度を利用できるが、事前の申請が必要

社会人1年目から返済が始まるという現実を、進学を決める段階から子どもと共有しておくことが、将来の心構えとして重要です。

高校生になる前に知っておくべき奨学金の基本的な仕組み

奨学金の話は、大学進学が決まってからで十分という判断が、実は準備の遅れにつながることがあります。

奨学金には返済不要の給付型と、返済が必要な貸与型があり、貸与型はさらに利子のつかない第一種と、利子のつく第二種に分かれます。この基本的な違いを知っているかどうかで、進路選択の際の資金計画の立てやすさが大きく変わります。

  • 給付型:返済不要。世帯収入などの基準を満たせば対象になる
  • 第一種(貸与・無利子):返済が必要だが利息はつかない。学力・家計の基準がやや厳しめ
  • 第二種(貸与・有利子):返済が必要で、利息もつく。基準は比較的緩やかで、多くの学生が利用している

奨学金の申し込みは、進学先が決まってから急いで準備するより、高校生になった段階で家族と一緒に基本的な仕組みを理解しておくほうが、余裕を持って判断できます。次の章では、実際に総返済額を計算する具体的な方法を紹介します。

参考:第二種奨学金の利子と利率の算定方法 | JASSO

奨学金の総返済額の計算方法をわかりやすく解説

なんとなく毎月〇円返すというイメージだけでは、総額でいくら返すことになるのかが見えてきません。ここでは、実際に計算するための考え方を、順を追って整理していきます。

第一種・第二種の違いで変わる返済シミュレーションの見方

同じ金額を借りたのに、返す総額が人によって違うというのは、奨学金の種類によって計算方法が異なるためです。

第一種奨学金(無利子)の場合、返済総額は借りた元本とほぼ同じになります。利息がつかないため、月々の返済額は借入総額÷返済期間(月数)というシンプルな計算で求められます。たとえば、月5万円を4年間(48か月)借りた場合、貸与総額は240万円になり、定額返還方式であれば月々の返済額はおよそ1万3,333円・返済期間はおよそ15年(180か月)というのが公式の返還例として示されています。

一方、第二種奨学金(有利子)の場合は、借りた元本に利息が加わるため、返済総額は借入総額を上回ります。利率は「利率固定方式」と「利率見直し方式」のどちらかを申込時に選択でき、前者は返済完了まで利率が変わらず、後者はおおむね5年ごとに市場金利にあわせて見直されます。同じ借入額でも、選んだ利率方式とその時々の市場金利によって、最終的な総返済額が変わる点を押さえておきましょう。

利子・返済期間・月々の返済額の3つを正しく計算する手順

総返済額を把握するには、次の3つの要素を順番に確認していく必要があります。

  • ①借入総額を確認する:月々の貸与額×貸与を受ける月数(在学期間)で、借りる総額が決まる
  • ②利率を確認する:第一種は無利子。第二種は利率固定方式か利率見直し方式かによって、適用される利率が変わる
  • ③返済期間を確認する:返済期間は、借入総額に応じてあらかじめ定められた期間(貸与月数や貸与総額によって決まる)が適用され、自分で自由に選べるわけではない

これらが分かれば、借入総額÷返済期間で月々のおおよその返済額(第一種の場合)が計算でき、第二種の場合はこれに利息分が上乗せされます。手計算でおおよその感覚をつかんだ上で、次に紹介する公式のシミュレーションツールで正確な数字を確認するという順序がおすすめです。

日本学生支援機構の公式ツールを使った返済シミュレーションの実例

自分で計算するのは難しそうという方のために、JASSOは公式の返済シミュレーションツールを無料で公開しています。

「奨学金貸与・返還シミュレーション」というWebサイトでは、貸与を受ける学校の種類・貸与月額・貸与期間などいくつかの質問に答えるだけで、貸与総額・毎月の返還額・返還が完了する時期を試算できます。JASSOのサイトには、学校種別・貸与月額ごとの返還例も一覧で掲載されており、大まかな目安であればこちらを参照するだけでも十分です。

  • 貸与月額・貸与期間(在学年数)を入力する
  • 第二種の場合は、利率固定方式・利率見直し方式のどちらかを選んで試算する
  • 出てきた毎月の返還額と返還完了までの期間を、親子で一緒に確認する

このツールを使えば、実際に借りようとしている金額で、卒業後何年間・月々いくら返していくことになるのかを、具体的な数字として親子で共有できます。

参考:奨学金貸与・返還シミュレーション | JASSO

返済シミュレーションで見えてくる「借りすぎ」のリスク

具体的な数字でシミュレーションをしてみると、なんとなく大丈夫だろうという感覚と、実際の返済額との間に、思っていた以上のギャップがあることに気づきます。

総返済額が借入額の1.5倍になるケースとその原因

借りた金額と同じくらいを返せばいいんでしょという感覚でいると、条件が重なった場合に総返済額が借りた金額を大きく上回ることがあります。

有利子の第二種奨学金を単独で利用する場合、利息が上乗せされるとはいえ、総返済額が借入総額の1.5倍近くにまで達することは通常あまりありません。しかし、次のような条件が重なると、返済にかかる総コストは大きく膨らみます。

  • 第一種と第二種を併用貸与し、さらに大学院まで貸与を継続するなど、借入総額そのものが大きくなるケース
  • 返済期日を延滞し、延滞金が加算されるケース。延滞金は延滞している割賦金に対して年3%の割合で課され続けるため、延滞が長引くほど負担が積み重なる
  • 返済が困難になり、元金だけでなく延滞金・将来利息を含めた「期限の利益の喪失」(残額の一括請求)に至ってしまうケース

通常の返済を続けている限り、総返済額が借入額の1.5倍に達することはまれですが、延滞や借りすぎが重なったときに当初の想定を大きく超える負担になるという点は、正確に理解しておく必要があります。

返済が家計を圧迫する「ローン貧乏」を避けるための目安

奨学金の返済で、毎月の生活がカツカツになってしまうというのは、社会人になってから多くの人が直面する現実です。

奨学金の返済負担を考えるうえで、一つの目安になるのが手取り収入に対する返済額の割合です。住宅ローンなど他の借入の審査でも、返済負担率(年収に対する年間返済額の割合)が重視されるのと同様の考え方で、奨学金の返済額が手取り収入を過度に圧迫していないかを確認することが大切です。

  • 毎月の返済額が、家賃や生活費を差し引いた自由に使えるお金の中に無理なく収まっているか
  • ボーナスなど不安定な収入をあてにした返済計画になっていないか
  • 他の借入(教育ローンの立替分の返済協力など)と合算して、無理のない範囲に収まっているか

進学先や進学ルートを決める段階で、この借入額なら卒業後どれくらいの手取りが必要かを逆算しておくことが、ローン貧乏を避ける現実的な備えになります。

奨学金と将来の収入を照らし合わせて判断する考え方

この学部・専門分野なら、将来どれくらいの収入が見込めるだろうかという視点も、奨学金の借入額を検討する際には欠かせません。

もちろん、将来の収入を正確に予測することはできませんが、借りる金額と将来の返済のしやすさをまったく切り離して考えるのは避けたいところです。卒業後の初任給の水準や、業界全体の収入の見通しなど、大まかな情報を参考にしながら、借入額の妥当性を検討することができます。

  • 借入総額が、卒業後の想定初任給の何か月分に相当するかを考えてみる
  • 奨学金の返済のために選ぶ道ではなく、本当に学びたい道を選んだ上で返済計画をどう立てるかという順序で考える
  • 迷った場合は、給付型奨学金や授業料減免など、返済不要の制度を優先的に検討する

奨学金は進学の選択肢を広げてくれる制度である一方、借りられるだけ借りるのではなく、必要な分だけ・返せる見通しを持って借りるという姿勢が、卒業後の生活を守る鍵になります。

参考:延滞金 | JASSO

親子で奨学金返済シミュレーションを活用した賢い借入計画の立て方

ここまで、総返済額の計算方法と借りすぎのリスクを見てきました。最後に、この知識を実際の借入計画に落とし込むための具体的な手順を紹介します。

「いくら必要か」から逆算して借入額を決める手順

奨学金は、限度額いっぱいまで借りておいたほうが安心という考え方は、必ずしも正しいとは限りません。

大切なのは、借りられる金額ではなく本当に必要な金額から逆算して決めるという順序です。

  • まず、進学先の学費・生活費など、必要な金額の総額を洗い出す
  • 家庭で準備できる金額(貯蓄・教育ローンなど)を差し引き、不足する部分を算出する
  • 不足分について、給付型奨学金や授業料減免などの返済不要の制度を優先的に検討する
  • それでも不足する場合に、貸与型奨学金でいくら借りるかを決める

この順序を踏まずにとりあえず限度額まで借りておこうと決めてしまうと、必要以上の借入と、それに伴う返済負担につながります。必要な金額を積み上げてから借入額を決めるという逆算の発想が、賢い借入計画の基本です。

返還免除・減額返還制度など知っておきたい救済策

返済が苦しくなったら、もう終わりだと思う必要はありません。JASSOには、返済が困難になった場合に利用できる救済制度がいくつか用意されています。

  • 減額返還制度:毎月の返還額を2分の1・3分の1・4分の1に減らし、その分返還期間を延ばす制度。総返還額そのものが減るわけではないが、月々の負担を軽減できる
  • 返還期限猶予制度:災害・傷病・経済的困難など、一定の事由に該当する場合に、返還期限を先送りできる制度
  • 所得連動返還方式:第一種奨学金を対象に、その年の所得に応じて返還月額が変動する方式に切り替えられる制度(願い出による審査が必要)
  • 死亡・障害による返還免除:返還者本人が死亡、または心身の障害により返還ができなくなった場合に、返還未済額の全部または一部が免除される制度

これらの制度は、いずれも滞納してから使うのではなく、返済が難しくなりそうな段階で早めに願い出ることが前提になっています。制度があることを知らずに滞納を続けてしまうと、延滞金が加算されたり個人信用情報に影響が出たりする可能性があるため、返済が苦しいと感じた時点で、まずJASSOに相談する意識を持っておきましょう。

参考:奨学金の返還について | JASSO

シミュレーション結果を使って子どもとお金の話を始めるコツ

奨学金の話は、まだ早いと思わず、シミュレーション結果という具体的な数字をきっかけに、親子で話し合ってみましょう。

抽象的に奨学金は将来大変だからと伝えるより、実際にJASSOのシミュレーションツールで試算した毎月〇円を〇年間返していくという数字を見せるほうが、子どもにとってずっと実感が湧きやすくなります。

  • この金額を借りたら、卒業後にこれくらい返していくことになるよと、実際の数字を一緒に見る
  • これは将来のあなたが返していくお金だから、一緒に考えようと、当事者意識を持たせる言葉を使う
  • 借りる金額を減らすには、どんな方法があるかを、給付型奨学金や授業料減免なども含めて一緒に調べてみる

シミュレーション結果という客観的な数字を間に置くことで、感情的な説教にならず、冷静に将来の計画を一緒に考える会話にしやすくなります。この経験は、奨学金だけでなく、将来住宅ローンなど大きな借入をする場面でも活きる、金銭感覚の土台になります。

まとめ:奨学金の返済シミュレーションは「借りる前」に親子でやるのが正解

奨学金は種類・利率・返済期間によって総返済額が変わり、返済は卒業直後から始まります。借りられる金額ではなく本当に必要な金額から逆算して借入額を決め、JASSOの公式シミュレーションツールで数字を事前に確認しておくことが大切です。減額返還制度などの救済策も知っておけば、万一の場合も慌てずに対応できます。進学先を決める前に、ぜひ一度、親子でシミュレーションを試してみてください。