第2回授業レポート「貯める力」|予算管理と先取り貯蓄を学んだ高校生の反応

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「お金は残ったら貯めればいい」という感覚、ありませんか?

多くの人が無意識に持っているこの考え方は、一見まともに聞こえます。でも実はこれが、貯金が続かない・いつまでもお金が貯まらないという状態を作り出している根本的な原因のひとつです。

第2回授業のテーマは「貯める」でした。でも私がこの授業で最初にやったことは、貯め方を教えることではありませんでした。目の前の生徒の中にある「貯めることへの誤解」を、静かに崩すことでした。

この記事では、なぜ「稼ぐ」の次に「貯める」を置いたのか・授業でどんな言葉を使って貯めることの本質を伝えたのか・そして生徒がどう変わったかを、できるだけそのまま書きます。

この記事では、次の3つのことを書いています。

  • 第1回「稼ぐ」から第2回「貯める」へという授業設計の意図
  • 「残ったら貯める」という考え方がなぜ機能しないのかという話
  • 目の前の生徒に「貯める順番」を体感させるために使ったワーク

「うちの子にもこういう話をしてみたい」「自分自身も改めて考えてみたい」という方に読んでもらえたら嬉しいです。

なぜ「貯める」を第2回に置いたのか──稼ぐの次に来るべき学びとは

カリキュラムを設計するとき、第2回のテーマを何にするかはすぐに決まりました。「稼ぐ」の次は「貯める」しかない、という確信がありました。「入ってくる」という話の次に「残す」という話が来て初めて、お金の流れの全体像が見えてくるからです。

第1回「稼ぐ」から第2回「貯める」へ──授業設計に込めた意図

第1回授業で「稼ぐには3種類ある」という話をした後、生徒の中に「じゃあどうすれば資産収入を得られるのか」という問いが生まれていました。投資の話・お金を増やす話への興味が自然に出てきたわけです。

でも私はあえてそこには進みませんでした。

稼いだお金を増やすことを考える前に、「今手元にあるお金をきちんと残せているか」という土台が必要だからです。どれだけ稼いでも・どれだけ投資の知識があっても、使い切ってしまっては意味がありません。

「攻め」の話である投資や副収入に向かう前に、「守り」の話である貯めることを先に理解しておく。この順番にこだわったのは、塾の授業設計と同じ考え方です。応用問題を解く前に基礎を固める・計算を速くする前に正確さを身につける。お金の学びも同じで、順番を間違えると途中で崩れます。

「残ったら貯めよう」という考え方が崩れる瞬間を見せたかった

授業の冒頭で、生徒にひとつ質問をしました。「貯金できている人とできていない人の違いって何だと思う?」という問いです。

返ってきた答えは「意志が強いかどうか」「我慢できるかどうか」というものでした。多くの人が最初にそう答えます。

でもそれは正確ではありません。貯金できる人とできない人の最大の違いは、貯めるタイミングが「収入が入った後か・使った後か」という順番の違いだけです。意志の強さとも我慢強さとも関係がない。この話をしたとき、生徒が少し驚いた顔をしたのが印象的でした。

「残ったら貯める」という考え方の問題は、残る保証がどこにもないという点です。人間は使えるお金があれば使います。これは意志の問題ではなく、心理学的に証明されている人間の性質です。「今月は残るはず」と思っていても、急な出費・誘惑・気の緩みで使い切ってしまう。これが「貯めようとしているのに貯まらない」という状態の正体です。

だから「残ったら貯める」を崩して「先に取り分けてから使う」という順番に変えることが、貯金を続けるための最も根本的な解決策になります。

授業ではこの話を、実際の数字を使いながら一緒に確認しました。「もし毎月のお小遣いから最初に10%だけ別の封筒に入れてから使うとしたら、1年後にいくら貯まってる?」という問いかけが、この考え方を自分ごととして実感させる入り口になりました。

第2回授業で教えた「予算管理」──50/30/20ルールを高校生に伝えた方法

「貯めることの順番」という話をした後、次のステップは「では具体的にどう分けるのか」という実践の話です。ここで登場したのが50/30/20ルールという予算管理の考え方でした。有名な枠組みですが、高校生に伝えるには少し工夫が必要でした。

予算とは「収入の使い道を事前に決める計画」だと伝えた理由

「予算」という言葉を聞いたとき、多くの高校生は「なんか面倒くさそう」「社会人がやること」という印象を持ちます。最初にその印象を和らげるために、私はあえてシンプルな言い換えから始めました。

予算とは「収入が入る前に、使い道を決めておくこと」です。それ以上でも以下でもありません。

「もし来月のバイト代が入る前に、どこにいくら使うかを決めておいたとしたら、お金の使い方って変わると思う?」という問いかけから入ることで、予算という概念が「管理のための難しいもの」ではなく「自分の選択を守るための道具」として伝わりやすくなります。

事前に使い道を決めることの最大のメリットは、「なんとなく使ってしまった」という後悔が減るという点です。予算を立てるのは自分の自由を縛ることではなく、自分が本当に使いたいものに使えるようにするための準備——この感覚を最初に伝えることが、予算管理への抵抗感を下げる鍵でした。

月収3万円のアルバイト代で50/30/20ルールを実際に計算したワーク

50/30/20ルールとは、収入を「必要なもの50%・欲しいもの30%・貯金20%」という割合で分けるという予算管理の枠組みです。アメリカ発の考え方ですが、シンプルで応用しやすいという点で高校生への説明に使いやすいと判断しました。

授業では「月収3万円のアルバイト代」という具体的な数字で計算を一緒にやりました。

月収:30,000円

必要なもの(50%):15,000円 → 交通費・学校の教材費・日用品など

欲しいもの(30%):9,000円→ 遊び・外食・ファッションなど

貯金(20%):6,000円→ 緊急資金・将来の目標のための積立

「必要なもの」と「欲しいもの」の区別が難しいという反応が来ることが多く、この授業でも「外食は必要? 欲しいもの?」という質問が出ました。そこで「なくても生きていけるなら欲しいもの・なければ困るなら必要なもの」という判断基準を一緒に確認しました。

この分類の作業自体が、消費への意識を高める練習になっています。「これは本当に必要か・欲しいだけか」という問いを立てる習慣が、将来の家計管理の土台になるからです。

発問「予算を立てずに使い続けるとどうなる?」に出た生徒の本音

計算ワークの後、私はあえて一度立ち止まって問いかけました。「もし予算を立てずに、入ってきたお金をそのまま使い続けたとしたら、1年後どうなっていると思う?」という問いです。

しばらく考えた後、返ってきた答えが「先に使いたい分を使ってしまうかも」というものでした。

この答えは正直で、核心をついています。予算がない状態では「今使いたい気持ち」が常に勝ちます。来月の自分・半年後の自分のことを考えて我慢するより、今目の前にある欲しいものに使う方が心理的に楽だからです。

「そういうことだよ。予算を立てる理由は、今の自分が未来の自分のお金を使い切らないようにするためなんだよ」という言葉に、少し考え込む様子がありました。「今の自分」と「未来の自分」という時間軸でお金を考えるという視点が、初めて自分ごととして入ってきた瞬間だったように見えました。

「残ったら貯める」vs「先に貯める」──1年後の差を見た生徒の表情

概念の話だけでは実感が薄いため、授業の後半では「実際の数字で比べる」というパートを設けました。同じ収入でも、貯めるタイミングを変えるだけで1年後に大きな差が生まれるという現実を、数字で見てもらうことが目的です。

バイト代5万円で試算すると、1年後に12万円の差が生まれる現実

月収5万円のアルバイト代で、2つのパターンを比べました。

パターンA:残ったら貯める場合

使い切ってしまう月・少し余る月がバラバラに続き、1年間の平均で月1万円しか貯まらなかった場合、1年後の貯金は12万円です。

パターンB:先に20%(1万円)を取り分けてから使う場合

毎月1万円を確実に取り分けてから残り4万円で生活すると、1年後の貯金は12万円です——この時点では同じです。

「じゃあ同じじゃないの?」という反応が来ます。そこで「でもパターンAで実際に毎月1万円残せる人は、どれくらいいると思う?」という問いを返しました。「あまりいないかも」という答えが来たところで、「だからこそ先に取り分けることに意味があるんだよ」という話につなげました。

先取りの本当の価値は「確実に貯まる」という点にあります。残ったら貯めようとした場合、使い切ってしまう月が続けば貯金はゼロのまま。先に取り分ける場合は、毎月確実に積み上がります。「確実に」という部分の重みが、じわじわと伝わった様子がありました。

先取り貯蓄の2大原則──「先に分ける」と「仕組みに任せる」を教えた理由

先取り貯蓄の考え方を伝えた後、「でも自分で分けようとしても、ついそのお金を使っちゃいそう」という正直な反応が返ってきました。この反応は想定内で、むしろ次の話への最高の入り口でした。先取り貯蓄を「自分の意志」に頼らずに続けるための2つの原則がここで登場します。

自動積立という考え方を初めて知った生徒の反応

先取り貯蓄を続けるための最も現実的な方法が「仕組みに任せる」という考え方です。具体的には給料や収入が入ったら自動的に別口座に移してしまうという自動積立の仕組みです。

「自分の意志で毎月取り分けようとすると、使いたい気持ちに負けることがある。でも最初から手元に来ない仕組みを作れば、意志力は関係なくなるんだよ」という説明をしたとき、「あ、それなら続けられそう」という反応が返ってきました。

この「仕組みに任せる」という考え方は、将来のNISAでの積立投資とも直接つながります。毎月決まった日に自動で積立が行われる設定にしてしまえば、「今月はやめておこう」という判断が入り込む余地がなくなります。

「意志の力でお金を管理しようとするのではなく、意志の力が不要な仕組みを作る」という発想の転換が、この授業で最も伝えたかったことのひとつでした。生徒がこの考え方を「使えそう」と感じてくれたことが、授業として最も手応えを感じた瞬間のひとつです。

※NISAなどの投資については、元本保証がないことをしっかり伝えています。

「緊急資金」という概念を高校生に初めて伝えた日

先取り貯蓄の話をした後、「では何のために貯めるのか」という問いに進みました。目標のための貯金・将来への備えという話をする前に、まず「緊急資金」という概念を伝えることが必要だと判断していました。高校生の多くがまだ知らない、でも社会に出たら真っ先に必要になるお金の話です。

バイクが壊れて修理代5万円──この発問に生徒が黙った理由

緊急資金の話は、いつも同じ問いかけから始めます。

「もし明日、急にバイクが壊れて修理代に5万円かかるとしたら、今すぐ払えると思う?」

この問いに、生徒は少し黙りました。すぐに「払えない」とも「払える」とも言えない、そういう間です。

アルバイトをしている生徒でも、月3〜5万円の収入のほとんどは使い切っていることが多いです。「急に5万円と言われても…」という感覚が、この間に表れていました。

「払えないとしたら、どうする?」という次の問いに、「親に借りる」「友達に借りる」という答えが返ってきました。そこで「社会人になって、その選択肢がなかったら?」と続けます。

この流れで「だから緊急資金が必要なんだよ」という話が、説明なしに伝わります。「貯金とは目標のためにするもの」という印象を持っていた生徒にとって、「いつ来るかわからない緊急事態のために置いておくお金がある」という発想は新鮮だったようでした。

緊急資金は「守りの資産」──投資に回してはいけないお金がある

緊急資金の概念を理解した後、必ずといっていいほど出てくる問いがあります。「その5万円、投資に回したらもっと増えるんじゃないの?」という問いです。

鋭い疑問だと思いますし、論理としては正しい方向を向いています。でも答えは「緊急資金は投資に回してはいけない」です。

その理由を伝えるために、こんな話をしました。「投資に回したお金は、必要なときにすぐ引き出せるとは限らない。株価が下がっているタイミングで急いで売ると、損をして引き出すことになる。緊急のときに損を確定させるのは最悪のタイミングだよ」

緊急資金は増やすためのお金ではなく、「いざというときに確実に使えるお金」である必要があります。だから投資ではなく、いつでも引き出せる普通預金や高金利の普通預金口座に置いておくことが正解です(詳細は金融庁公式サイト https://www.fsa.go.jp でご確認ください)。

「攻めのお金と守りのお金を分ける」という考え方を、この文脈で初めて伝えました。お金には役割があって、役割に合った置き場所がある——この視点が腑に落ちた様子がありました。

まず3万円、次に10万円──段階的な目標設定が生徒に刺さった理由

「緊急資金はいくら必要?」という話になったとき、「生活費の3〜6か月分」という一般的な目安をそのまま伝えることは避けました。高校生に「3〜6か月分」と言っても、ピンと来ないからです。

代わりに「まず3万円を目標にしよう」という話をしました。

「ちょっとした急な出費——電車を乗り間違えた・スマホの画面が割れた・急に必要なものが出てきた——そういうときに3万円手元にあれば、ほとんどの場面でなんとかなる。まずそこを目指してみよう」という伝え方です。

「3万円貯まったら、次は10万円を目標にする。10万円あれば、もう少し大きなトラブルにも対応できる。この積み上げ方が、緊急資金の現実的な作り方だよ」という段階的な目標設定が、高校生には伝わりやすかったようです。

「いくら貯めればいいの?」という問いに対して大きな数字を出すと、最初から諦めが生まれます。「まず3万円」というゴールが見える距離感が、貯めることへの行動を引き出すうえで重要だと感じています。

貯蓄を続けられない「敵」と向き合う──生徒自身が考えた対策

先取り貯蓄の仕組みと緊急資金の必要性を理解した後、授業の後半は少し違う方向に進みました。「貯めることはわかった。でも実際に続けられない理由って何だと思う?」という問いかけです。知識を伝えるだけでなく、自分自身の行動のパターンを考えてもらうパートです。

衝動買い・外食・サブスク・セール──4つの敵を生徒と一緒に分析した

「貯められない理由」を一緒に考えていくと、4つのパターンが出てきました。

衝動買いは「欲しいと思った瞬間に買ってしまう」パターンです。「その場で買わずに24時間待ってみる」というルールが、衝動買いへの最もシンプルな対策になります。翌日になっても欲しければ買う・そうでなければ買わないという判断が、意外と多くの衝動を止めることができます。

外食は「気づいたら食費が増えていた」というパターンです。1回の金額は小さくても、積み重なると大きくなります。「月に何回まで」という回数の上限を自分で決めることが、外食費の管理につながります。

サブスクリプションは「使っていないのに払い続けている」というパターンです。動画配信・音楽・ゲームという各サービスを、「先月実際に使ったか」という問いで見直すだけで、不要な支出が見つかることが多いです。

セール・割引は「安いから買う」というパターンです。「50%オフ」という表示に反応して買ったものが、結局使わないまま終わる。必要だから買うのではなく安いから買うという判断が、貯蓄を削る典型的な行動です。

4つを並べながら「どれが自分に一番当てはまりそう?」と聞くと、少し考えてから正直に答えてくれました。自分のお金の使い方のクセを言語化する体験自体が、この授業の重要なパートになっています。

「意志力より仕組み」という言葉が刺さった生徒と刺さらなかった生徒

この授業を通じて最も印象的だったのは、「意志力より仕組み」という考え方への反応が人によって全然違うという発見でした。

「意志力に頼らない仕組みを作ることが大事だよ」という話をしたとき、すぐに「なるほど、それなら続けられそう」と感じてくれる生徒がいます。自動積立・口座を分ける・先取りするというアクションが「自分ごと」として響く場合です。

一方で「でも仕組みを作っても、結局使っちゃう気がする」という反応もあります。この場合、仕組みへの信頼よりも「自分には続けられないんじゃないか」という自己不信の方が先に来ています。

どちらの反応も正直でいいと思っています。「意志力より仕組み」という言葉が刺さらなかった生徒には、「じゃあまず一番小さい仕組みから試してみよう。毎月500円だけ別の封筒に入れることから始めてみたら?」という話をしました。

金融教育で大切なのは「正しい知識を伝えること」だけではなく、「目の前の人が実際に動き出せるか」という部分です。1対1の授業だからこそ、この調整ができると感じています。

まとめ:第2回授業を終えて──塾長が感じた「貯める力」の本質

第2回授業を終えて、改めて感じたことがあります。

「貯める力」は、意志の強さでも我慢強さでもないということです。「残ったら貯める」から「先に取り分けてから使う」という順番の変化・「仕組みに任せる」という設計の発想・「緊急資金という守りのお金を先に作る」という優先順位。この3つが揃ったとき、貯めることは「頑張ること」ではなく「当たり前のこと」になります。

目の前の生徒が授業の最後に「なんか、やれそうな気がしてきた」と言いました。大げさな感想ではなく、静かな言葉でした。でもその静かさの中に、本当に何かが変わった感覚がありました。

貯める力とは、お金を我慢して手放さない力ではなく、「未来の自分のために今の自分が動ける力」なのだと思っています。その力の育て方を、これからも一緒に考えていきたいと思っています。