貯金だけで本当に足りる?親子で考える“資産形成”の基本

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堀 智紀(塾長)|現役学習塾経営者・FP3級取得。宮崎市で「15歳からはじめるお金の勉強」をコンセプトにHORI塾+を運営。
教育者という中立の立場から、お金の知識を発信しています。

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「とりあえず貯金しておけば安心」——そう考えている方は多いのではないでしょうか。実際、日本銀行の資金循環統計によれば、家計の金融資産のうち現金・預金が占める割合は依然として5割超と、諸外国と比べて高い水準にあります。

しかし、日本銀行が2026年に政策金利を引き上げたとはいえ、普通預金の金利は年0.1〜0.2%台にとどまる一方、物価上昇率は2〜3%台で推移しています。つまり、預金に置いているだけでは、お金の実質的な価値は年々目減りしているのが現状です。それだけでなく、不透明な年金制度や上昇を続ける教育費など、インフレ・年金・教育費という3つの波が同時に家計へ押し寄せているのが今の時代です。10年・20年先を見据えた資金であればなおさら、貯金だけに頼るのはリスクを伴います。

貯金は、生活を守るための大切な土台です。その土台の上に、資産形成、つまりお金を育てていくという視点を加えることで、親子で将来に備える力が育っていきます。ここでは、貯金の役割を踏まえた上で、資産形成の基本的な考え方を、具体的な数字とともに整理していきます。

なぜ貯金だけでは不安が残るのか

「銀行に預けておけば安心」という常識は、2026年現在の経済状況では通用しにくくなっています。なぜ今、貯金以外の選択肢を知っておく必要があるのか、整理しましょう。

インフレ(物価上昇)でお金の価値が目減りする

銀行に預けている数字そのものは減らなくても、世の中のモノの値段が上がると、そのお金で買えるモノの量は少なくなります。これがインフレ(物価上昇)によるお金の価値の目減りです。

総務省統計局の消費者物価指数によれば、2026年に入ってからも物価上昇率は前年比1.5〜1.8%程度で推移しており、2020年から2025年までの5年間で物価は約12%上昇しました。一方、多くの銀行の普通預金金利は年0.1〜0.2%台にとどまっています。

具体的に考えてみましょう。仮に100万円を普通預金(金利0.2%)に1年間預けた場合、増える利息はわずか2,000円程度です。しかし、その間に物価が1.7%上昇したとすると、実質的な購買力は約1万5,000円分目減りする計算になります。利息よりも物価の上がり幅が大きければ、持っているお金の実質的な力は弱まっていくのです。このリスクを、まず頭に入れておきましょう。

※上記の試算は簡略化した一例であり、実際の金利・物価上昇率は金融機関や時期によって異なります。最新の消費者物価指数は総務省統計局の公式サイトでご確認ください。

参考:統計局ホームページ/消費者物価指数(CPI)

長期の支出は貯金だけでは追いつきにくい

教育・住宅・老後は、一般的に人生の3大支出と呼ばれています。準備期間が長く、必要な金額も大きくなりやすい支出です。

具体的な金額で見てみましょう。以前の記事でも紹介したとおり、大学の年間在学費用は国公立で約103万円、私立文系で約152万円、私立理系で約183万円とされ、4年間では数百万円規模になります。住宅購入では、フラット35利用者調査によれば注文住宅の全国平均所要資金は約4,600万円前後、老後資金についても、夫婦世帯で公的年金だけでは生活費が不足し、数百万円〜2,000万円規模の取り崩しが必要になるという試算もあります(総務省「家計調査」等をもとにした一般的な目安)。

収入の中から貯金だけでこれらを賄おうとすると、日々の生活を過度に切り詰めなければならないケースも出てきます。10年・20年先を見越した支出には、お金にも働いてもらう(運用する)視点が欠かせません。

年金だけに頼れない時代|自分年金を育てる発想

「将来、年金は本当にもらえるのか」という不安は、多くの世代が共通して抱いているものです。しかし大切なのは、受給の可否を憂うことではなく、不足分をどう補うかという具体的な戦略を持つことです。

厚生労働省が2024年に公表した年金の財政検証によれば、現役世代の手取り収入に対する年金額の割合を示す所得代替率は、2024年度時点で61.2%となっていますが、今後の少子高齢化の進行を踏まえた自動調整(マクロ経済スライド)によって、将来的にはこの水準から低下していく見通しが示されています。経済成長の前提によっては、所得代替率が50%程度まで下がるケースも試算されており、年金の受給額そのものがなくなるわけではないものの、現役時代と同じ生活水準を年金だけで維持するのは難しくなる可能性があります。

かつての「老後は年金で悠々自適」というモデルはすでに過去のものとなりつつあり、公的年金をベースにしつつ、不足する生活費や医療費・介護費用などを現役時代から自分専用の年金として積み立てていく自助努力が、家計管理の一つの選択肢になりつつあります。

十分な蓄えがあることは、将来いつまで働くか、どこで暮らすかという選択肢を自分たちでコントロールできる自由にもつながります。公的年金に頼り切らない第二の柱を持つことが、社会情勢に振り回されない暮らしを守る備えになります。

※上記は2024年財政検証(厚生労働省)に基づく見通しであり、実際の年金額・所得代替率は今後の経済状況や制度改正によって変動します。最新の情報は厚生労働省の公式サイトでご確認ください。

参考:令和6(2024)年財政検証結果 | いっしょに検証! 公的年金 | 厚生労働省

参考:フラット35利用者調査

教育費というまとまった支出と、どう向き合うか

高校から大学卒業までにかかる費用は、数百万から一千万円単位にのぼることも珍しくありません。特に入学金や前期授業料など、まとまった現金が必要になるタイミングは家計に大きな負担を与えます。これをその場の収入だけで乗り切ろうとすると、親自身の老後資金を削らざるを得ないという状況が生じます。

資金不足を補うために、安易に奨学金(貸与型)や教育ローンに頼ることは慎重であるべきです。子どもが社会に出た瞬間に数百万円の借金を背負うことや、親が定年後もローン返済に追われることは、家族全員のその後の家計に重い負担をかけてしまいます。借りる前に、いかに準備しておくかという視点を持ち、子どもが小さいうちから資産形成の仕組みを取り入れておくことで、進路の選択肢を広げてあげることができます。

※奨学金制度の詳細は日本学生支援機構(JASSO)の公式サイトをご参照ください。

参考:JASSO

収入を増やすだけでは追いつかない理由

もっと働いて稼げばいいと考えるかもしれません。しかし、伸び悩む手取り給与や社会保険料の負担増、そして何より私たちの時間には限りがあります。労働による収入を増やす努力と並行して、お金にも働いてもらう資産運用を組み合わせる、守る・育てるの2本立て発想を持つことが、これからの家計管理には欠かせません。

守るお金と育てるお金を分けて考える

すべてのお金を投資に回すのは危険ですが、すべてを貯金にしておくのも将来の機会を逃すことになります。

  • 守るお金:病気や災害に備え、すぐに引き出せる預金で確保する
  • 育てるお金:10年・20年先まで使わない分は、資産形成に回して成長を待つ

たとえば、月1万円を年利3%で20年間積み立てた場合、複利の効果によって元本240万円が約328万円まで育つという試算もあります(過去の実績に基づく参考値であり、将来の運用成果を保証するものではありません)。すぐに使う予定のない資金を守るお金に置いたままにしておくと、こうした成長の機会を活かせないままになってしまいます。

このお金の色分けをすることが、将来の不安を着実な安心に変える出発点です。

※上記の試算はあくまで一例です。実際の教育費・住宅費・老後資金の必要額は家庭状況によって大きく異なり、投資の運用成果を保証するものでもありません。

参考:つみたてシミュレーター

参考:フラット35利用者調査

参考:統計局ホームページ/家計調査

親子で共有したい資産形成の基本イメージ

資産形成を難しく考える必要はありません。お子さんと一緒に、まずはシンプルなイメージを共有することから始めましょう。

お金の役割を3つに分ける(使う・貯める・増やす)

お金には3つの大きな役割があります。まずはここから整理してみましょう。

  • 使うお金:今日・明日を楽しく過ごすために使うお金
  • 貯めるお金:数年以内の目標(旅行や進学など)のためにとっておくお金
  • 増やす(育てる)お金:10年・20年先の自分を助けるために育てていくお金

この3つのバランスを整えることが、自分らしい人生を作る土台になります。

子どもに伝える際は、実際の金額でイメージしてもらうと分かりやすくなります。例えば、月5,000円のお小遣いなら、使うお金3,000円・貯めるお金1,500円・増やすお金500円というように、目に見える形で3つの財布に分けてみる方法があります。最初は増やすお金の割合が小さくても構いません。大切なのは、収入が入ったときに3つへ振り分けるという習慣そのものを、小さいうちから体に染み込ませることです。

大人の家計に置き換えると、この考え方はそのまま資産形成の基本にもつながります。

  • 使うお金:日々の生活費(給料が入ったら、まず確保する分)
  • 貯めるお金:生活防衛資金として、生活費の3〜6か月分を普通預金に確保
  • 増やすお金:すぐに使う予定のない余裕資金を、新NISAのつみたて投資枠などで運用

※投資には元本割れのリスクがあります。上記の試算はあくまで一例であり、将来の運用成果を保証するものではありません。

資産形成は植物を育てるようなもの

投資と聞くとギャンブルを連想する方も多いですよね。でも、資産形成の本質はまったく異なります。

種から植物を育てるように、良い土壌(適切な運用先)を選び、太陽と水(時間)をかけてじっくり大きくしていく作業です。ギャンブルは、誰かの負けが誰かの勝ちになる奪い合いです。一方、資産形成は、世界全体の経済成長をみんなで分け合う前向きな仕組みです。この違いを、ぜひお子さんと一緒に確認してみてください。

具体的に見てみましょう。全世界株式に連動するインデックスファンドは、世界中の企業が生み出す利益の成長を、株価という形で反映します。世界の名目GDPは、短期的な増減はあっても長期的には拡大を続けており、こうした経済成長の果実を、投資を通じて自分の資産に取り込んでいくというのが、資産形成の基本的な仕組みです。

短期ではなく、長期・コツコツが着実な資産形成の基本

「一晩で大金持ちに」という話には、必ずそれ相応の大きなリスク(危険)が伴います。

目指すべきは、毎月の余裕資金をコツコツ積み立て、複利(ふくり)の力を活用して長く続けることです。急がば回れの精神こそが、資産形成において着実に結果を出すための基本スタンスになります。

先ほどの例の場合、月1万円を年利3%で積み立てると10年間では約140万円、20年間では約328万円、30年間では約583万円になるという試算があります。積立期間が長くなるほど、複利の効果によって資産の増え方が加速していく様子が分かります。一方、短期間で大きな利益を狙う取引は、値動きの予測が難しく、初心者ほど損失を出しやすいことが知られています。短期で一気に増やすのではなく長期でコツコツ育てることが、多くの個人投資家にとって現実的な選択肢とされています。

※投資には元本割れのリスクがあります。上記の試算はあくまで一例であり、将来の運用成果を保証するものではありません。

参考:基礎から学べる金融ガイド|金融庁

まずは貯金の役割をしっかり整理する

資産形成を始める前に、貯金がわが家で果たしている役割を明確にしましょう。すべての現金を貯金とひとくくりにせず、目的別に分けることで、運用に回せるお金の境界線が見えてきます。

生活防衛資金:いざという時の心の守り神

最も重要なのが、病気やケガ、急な家電の故障などに備える生活防衛資金です。

このお金は、増やすことよりもいつでもすぐに使えることが優先されます。目安としては、会社員・公務員であれば生活費の3〜6か月分、収入が不安定になりやすい自営業・フリーランスであれば6か月〜1年分が一般的とされています。例えば、毎月の生活費が20万円の家庭であれば、会社員なら60万〜120万円、フリーランスなら120万〜240万円が一つの目安になります。

会社員には、病気やケガで働けなくなった場合の傷病手当金や、失業時の雇用保険(失業手当)といった公的なセーフティーネットがあるため、フリーランスに比べて必要額が少なめで済むという違いがあります。ご自身の働き方に応じて、目安の月数を調整することが大切です。

この土台がしっかりしているからこそ、心にゆとりを持って他の資産運用に取り組めるようになります。

※上記の金額はあくまで一般的な目安です。実際の必要額は家族構成、住宅ローンの有無、健康状態などによって異なります。

近い将来の目標:数年以内に使う守るべきお金

次に、数か月から数年以内に使い道が決まっているお金です。旅行の費用や、近いうちに必要になる入学準備金などがこれにあたります。

使う時期が決まっているお金は、価格が上下する投資には回さず、守るべきお金として確実に確保しておきましょう。

具体的にイメージしてみましょう。例えば、3年後に子どもの高校入学準備金として50万円が必要な場合、このお金を全世界株式インデックスファンドなどで運用してしまうと、使うタイミングでたまたま市場が下落していれば、必要な金額に届かないリスクがあります。このように、使う時期が明確に決まっている資金は、価格変動のある運用商品ではなく、普通預金や定期預金、個人向け国債など、元本割れのリスクが低い方法で確保しておくのが基本です。

  • 数か月〜1年以内に使うお金:普通預金(いつでも引き出せる流動性を優先)
  • 1〜5年程度で使うお金:定期預金や個人向け国債(生活防衛資金よりやや高い金利を狙いつつ、元本割れのリスクは避ける)

お子さんへの伝え方:貯金は自由を支える土台

「貯金しなさい」と言うだけでは、お子さんにはなかなか伝わりません。貯金があると、困ったときや新しい挑戦をしたいときに、自分を助けてくれるんだよと伝えてあげましょう。

貯金は我慢の結果ではなく、自分の自由と安心を守るポジティブな土台です。そのイメージを親子で共有することが、お金の教育の出発点になります。

例えば、「3年後に修学旅行の自由費用として3万円使いたいなら、月々いくら貯めればいいか」を一緒に計算してみるのも良い方法です。3万円÷36か月=月々約830円という具体的な数字が見えると、貯金が我慢ではなく目標達成のための計画だと実感しやすくなります。

資産形成のお金は別枠で考える

貯金の土台(生活防衛資金など)が整ったら、そこから先の余剰分を資産形成(増やすお金)という別枠のステージへと進めましょう。

当面使わないお金を少しずつ資産形成に回す

生活防衛資金と近い将来の使い道が確保できたら、それ以外の、少なくとも5年、できれば10年以上は使う予定のないお金を資産形成に回します。

一度に全額を移す必要はありません。毎月の余裕資金から少しずつ、未来のために育てる場所へと移していく感覚でスタートするのが、無理なく続けるコツです。

具体的な始め方をイメージしてみましょう。例えば、手取り月収25万円の家庭であれば、まず生活防衛資金(3〜6か月分)を確保し、教育費など数年以内に使うお金を別口座に分けた上で、残った余裕資金の中から月5,000円〜1万円程度を新NISAのつみたて投資枠に回す、というのが無理のない始め方の一例です。

※投資には元本割れのリスクがあります。上記の金額はあくまで一例であり、実際の配分は家計の状況に応じて調整してください。将来の運用成果を保証するものではありません。

参考:基礎から学べる金融ガイド|金融庁

銀行預金だけでなく、長期投資も選択肢に入れる

銀行預金は元本が保証されるという安心感があります。ただし、インフレが続く状況では、増やす力はほとんどありません。

冒頭でも触れたとおり、普通預金の金利が年0.1〜0.2%台にとどまる一方、物価上昇率は近年2%前後で推移しています。この状況が続くと、預金だけでは実質的な資産価値が目減りしていく可能性があります。

そこで、投資信託などを活用した長期投資を選択肢に加えましょう。世界中の経済活動にお金を託すことで、時間の経過とともに資産が育っていく可能性があります。

親子でお金の色分けについて話し合ってみる

わが家のお金の色分けについて、お子さんと一緒に話し合う機会を作ってみましょう。

「この通帳のお金は、みんなで旅行に行くための貯金だよ」

「こっちの運用しているお金は、将来のあなたの学びや、パパ・ママの老後のために育てているお金なんだよ」

このように具体的に話すことで、お子さんは目的によってお金の置き場所を変えるという知恵を学んでいきます。

例えば、家庭内で実際に3つの通帳や口座(生活費用・生活防衛資金用・資産形成用)を分けて、それぞれに名前をつけてみるのも一つの方法です。「旅行貯金」「もしもの時貯金」「未来を育てる貯金」のように呼び名を工夫すると、子どもにとってもお金の役割がイメージしやすくなります。

親子で話せる資産形成の入り口トピック

資産形成という概念を伝える際は、まず、なぜお金が増えるのかというポジティブな仕組みから話を始めてみましょう。

お金が増える仕組みはありがとうの対価

お金が増える背景には、大きく分けて3つの仕組みがあります。

  • 利息(りそく):銀行にお金を貸してあげたお礼として受け取るもの
  • 配当(はいとう):応援している会社が利益を出したときにお裾分けしてもらうもの
  • 値上がり:そのモノ自体の価値が、買ったときよりも高くなること

これらはすべて、自分のお金がどこかで誰かの役に立った結果として生まれる社会からの報酬です。そのイメージをお子さんと共有することが、お金への前向きな姿勢を育てます。

それぞれ、身近な例で伝えるとより具体的にイメージしやすくなります。

  • 利息:「銀行にお金を預けると、銀行はそのお金を必要としている人や会社に貸し出す。貸したお礼として、少しだけ利息をもらえるんだよ」
  • 配当:「大好きなゲーム会社や、いつも食べているお菓子の会社の株を持っていると、その会社が儲かったときに、株主にも利益の一部が配られることがあるんだよ」
  • 値上がり:「みんなが欲しがる会社やモノは、需要が増えて値段が上がっていく。逆に、人気がなくなれば値段は下がることもあるんだよ」

こうした具体例を交えながら、お金が増える仕組みは魔法ではなく、社会の中で誰かの役に立ったことへの対価であるという感覚を、少しずつ育てていきましょう。

リスクは危険ではなく上下の揺れのこと

投資の世界で使われるリスクという言葉は、日常で使う「危ない!」とは少し意味が異なります。価格が上下に動く幅(振れ幅)のことです。

大きく増える可能性があるものは、その分、下に動く幅も大きくなります。リスクを避けるべき怖いものと捉えるのではなく、どの程度の揺れなら、ハラハラせずに見守れるかを家族で考えることが、資産形成の重要な出発点です。

具体的にイメージしてみましょう。一般的に、株式は債券より値動きの幅(リスク)が大きいとされ、1年間で数十%上下することも珍しくありません。一方、債券は株式に比べて値動きが穏やかで、その分期待できるリターンも小さくなる傾向があります。大きく増える可能性があるものほど、大きく減る可能性もあるという表裏一体の関係を、まず親子で確認しておきましょう。

ゆっくり・着実が一番安心な理由

「明日にはお金が2倍になる」といった短期的な儲け話は、失敗したときのダメージも大きくなります。

一方で、10年・20年といった長い時間をかければ、一時的な値下がりがあっても経済の成長とともに少しずつ回復し、資産が育っていく可能性が高まります。以前の記事でも紹介したとおり、一般的に、世界株式のインデックスファンドを長期にわたって保有した場合、保有期間が長くなるほど元本割れのリスクが低減する傾向があるとされています(ただし、これはあくまで過去の傾向であり、将来の運用成果を保証するものではありません)。

時間を味方につけることで、ゆっくり、でも着実に育てるという安心感を親子で共有しましょう。

参考:基礎から学べる金融ガイド|金融庁

子どもの年齢別|どこまで話すかの目安

お子さんの理解度に合わせて、伝える情報の深さを調整していきましょう。無理にすべてを教えようとせず、興味の芽を育てるイメージで進めることが大切です。

小学生:貯金と少し増えるポジティブなイメージまで

小学生のうちは、お金をどこかに預けておくと、増えることがあるという基本的な仕組みを理解してもらうだけで十分です。

伝え方の例:「銀行にお金を預けておくと、銀行がそのお金を使って新しいお店を作りたい人や困っている人を応援するんだ。その『ありがとう』のお礼として、少しだけお金を増やしてくれることがあるんだよ」

社会に役立つポジティブな循環として伝えることで、お金への親しみが生まれます。

この年齢では、難しい税率や制度の話は不要です。お小遣いを使う・貯める・増やすの3つに小分けにして、実際に3つの貯金箱や封筒に振り分けてみるのも良い方法です。増やすの箱に入れたお金を、親が管理する子ども名義の口座に一緒に預けに行くという体験だけでも、抽象的な仕組みが少し具体的になります。

中学生:リスクと長期の考え方を植物で例える

物事を客観的に捉えられるようになる中学生には、変動(ゆれ)と時間の関係について触れてみましょう。

伝え方の例:「資産形成は、お花や野菜を育てるのと似ているよ。天気が悪くて元気がなくなる(価値が下がる)年もあれば、ぐんぐん育つ年もある。一喜一憂せずに、長い時間で見守っていくことが大切なんだ」

急がば回れの精神を、身近な例えで共有するのがコツです。

この年齢では、少しだけ具体的な数字を添えると理解が深まります。例えば、ここで「月1万円を年利3%で20年間積み立てると約328万円になる」というシミュレーションを一緒に見ながら、「毎年同じペースで増えるわけではなく、増える年も減る年もあるけれど、20年という長い目で見ると、こういう結果になることが多いんだよ」と伝えると、抽象的な植物の例えが具体的な数字とつながります。

高校生:投資信託や分散投資など、具体的な知恵に触れる

社会の仕組みへの関心が強まる高校生には、実社会で使われている具体的な言葉を少しずつ紹介していきましょう。

伝え方の例:「一つの会社だけに全額を預けるのは、その会社がダメになったときに困るよね。だから、世界中のたくさんの会社に少しずつ分けて投資する分散投資という方法があるんだ。そのための詰め合わせパックのような商品が投資信託だよ」

リスクを抑えるための守りの知恵についても、話を広げてみてください。

このタイミングで、信託報酬(運用にかかるコスト)や、新NISAのつみたて投資枠についても触れておくと、高校卒業後に自分名義でNISA口座を開設する際の土台になります。「18歳になったら、あなた自身の名前でこの制度を使えるようになるんだよ」と伝えることで、資産形成が自分ごととして意識されるきっかけになります。

まとめ|貯金+資産形成で、親子の将来の安心を育てよう

これからの時代、今の暮らしを守る貯金と、未来の可能性を広げる資産形成の両輪を回していくことが、家族の安心を築く土台となります。インフレ・年金・教育費という3つの波は同時に押し寄せるものだからこそ、貯金だけに頼らない多角的な備えが必要です。

生活防衛資金でいざという時の備えを固めつつ、余裕資金を長期でコツコツ育てていくこと。この視点を、親子で早いうちから共有しておきましょう。資産形成は、決して特別な人だけのものではありません。親が自ら学び、行動する姿こそが、どんな教科書よりも説得力のあるお金の教育になります。