「中学受験を考え始めたけれど、全部でいくらかかるのか分からない」——そんな不安を抱えていませんか。中学受験の費用は塾の月謝だけでなく、講習費や受験料、合格後の入学金、入学してから続く学費まで、時期ごとに重なっていきます。
塾代や講習費、受験料といった受験までにかかる費用の相場に加えて、入学金や入学後6年間に続く学費の目安、公立中高一貫校という選択肢も含めた計画的な準備方法を紹介します。
塾で生徒や保護者の方と接する中でも、受験が近づいてから費用の面で悩まれているというお話を耳にすることがあります。早めに総額の見通しを立てておくことで、お子さんの受験に落ち着いて向き合いやすくなります。家族で納得して進路を選ぶための材料として、役立ててください。
中学受験の費用相場、実は想定外が多い理由
中学受験の費用というと、まず塾の月謝を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。しかし実際には、塾代以外にもさまざまな出費があり、学年が上がるにつれて金額も大きく変わっていきます。ここでは、中学受験の費用が想定を超えやすい理由を、費用の全体像、学年ごとの変化、平均値の見方の3つの視点から整理します。
塾代だけじゃない?見落としがちな費用の全体像
中学受験にかかる費用は、塾に毎月支払う授業料だけではありません。受験までの数年間で、次のような費用が発生します。
- 塾の授業料:毎月の月謝に加え、入塾金や教材費、施設費などがかかる
- 講習費:春期・夏期・冬期の季節講習や、6年生の志望校別の特訓講座など
- 模試代:学力や志望校の合格可能性を確認するための模擬試験の受験料
- 教材費:過去問題集や参考書など、家庭学習のための教材
- 受験料:受験する学校ごとにかかる検定料
- 入学手続きの費用:合格後に納める入学金や、制服・学用品の購入費
このほかにも、塾への送迎や通塾の交通費、塾で食べるお弁当や軽食代、学校説明会や文化祭に参加するための交通費など、細かな出費が積み重なります。地方から首都圏などの学校を受験する場合は、受験当日の交通費や宿泊費も必要になります。
こうした費用は、一つひとつは大きくなくても、数年間を通じて合計すると、まとまった金額になります。月謝だけで予算を考えていると、想定外の出費に感じやすくなるのはこのためです。
学年別に変わる費用感|4年生・5年生・6年生の違い
中学受験の費用は、学年が上がるにつれて増えていくのが一般的です。多くの進学塾では、小学4年生から本格的な受験準備のカリキュラムが始まり、学年ごとに学習内容と通塾の回数が変わっていきます。
学年ごとの費用の特徴は、おおむね次のとおりです。
- 4年生:週に数回の通塾から始まることが多く、月謝は比較的抑えられている
- 5年生:学習内容が難しくなり、授業の回数や時間が増えることで、月謝と講習費が上がる
- 6年生:志望校別の特訓講座や、模試、過去問対策などが加わり、年間の費用が大きく増える
特に6年生は、通常の授業に加えて、夏期講習や冬期講習、正月の特訓、入試直前の講座などが重なり、1年間の費用が4年生のころの倍以上になることもあります。
文部科学省の「子供の学習費調査」(令和5年度)でも、公立小学校では、塾や家庭教師などにかかる補助学習費が、高学年になるにつれて増える傾向が見られます。費用は学年とともに段階的に増えていくものと考え、4年生の時点で6年生までの総額を見通しておくことが大切です。
「うちだけ高い?」と感じる前に知っておきたい平均値の落とし穴
中学受験の費用を調べると、さまざまな平均額を目にします。ただし、平均値を見るときには、いくつか注意しておきたい点があります。
たとえば、公的な統計に出てくる塾代の平均額には、中学受験をする子どもだけでなく、受験をしない子どもも含まれています。週に1回だけ補習塾に通う子どもや、塾に通っていない子どもも含めた平均であるため、本格的に中学受験の準備をしている家庭の費用と比べると、低めの金額になります。
平均値を参考にするときは、次のような点に気をつけましょう。
- その平均に、どのような子どもや家庭が含まれているか
- 対象となっている地域(首都圏か、全国か)はどこか
- 塾代だけの金額か、講習費や模試代、受験料まで含めた金額か
平均値と比べて「うちだけ高い」と不安になったり、反対に「平均より安いから大丈夫」と安心したりする前に、その数字が何を表しているのかを確認することが大切です。
より参考になるのは、平均値ではなく、実際に通う予定の塾の料金と、受験する予定の学校の費用をもとに、自分の家庭の総額を計算することです。次の章では、塾の種類ごとに、塾代の目安を見ていきます。
参考:【令和5年度子供の学習費調査結果のポイント】 令和8年1月16日 1 学習費全体の状況 (
中学受験にかかる塾代の相場
中学受験にかかる費用の中で、最も大きな割合を占めるのが塾代です。ただし、塾代は通う塾の種類や受講する講座によって大きく変わります。ここでは、大手進学塾の費用の目安と、個別指導や映像授業との違い、見落としやすい季節講習の費用を整理します。
大手進学塾の年間費用の目安と、料金を比べるときの注意点
中学受験向けの大手進学塾では、小学3年生の2月から始まる「新4年生」のクラスから、本格的な受験カリキュラムが始まるのが一般的です。各塾の公表している料金や、教育情報サイトなどの試算をもとにすると、講習費や模試代を含めた年間の費用は、おおむね次のような水準になります。
- 4年生:年間40万〜50万円程度
- 5年生:年間60万〜70万円程度
- 6年生:年間100万〜120万円程度
3年間の合計では、200万〜240万円程度が一つの目安です。株式会社モデル百貨が2024年3月に公表した、中学受験を経験した保護者500人への調査でも、塾に3年間通った場合の塾代総額の平均は、約224万円という結果が出ています。ただし、受講する講座や塾によって金額の幅は大きく、上記の目安を超える家庭もあります。
塾の料金は、月謝だけを比べても正確な比較にはなりません。料金を比べるときは、次のような点を確認しましょう。
- 入塾金や教材費、施設費、テスト代が、月謝とは別にかかるか
- 季節講習や志望校別の特訓講座が、必須か選択か
- 6年生の後半に、追加の講座がどのくらい用意されているか
- 料金は年度ごとに改定されるため、最新の金額を公式サイトや説明会で確認できるか
月謝が安く見えても、講習や追加講座を含めると、総額では大きく変わることがあります。入塾前に、6年生までにかかる費用の見通しを、塾に確認しておくことが大切です。
個別指導・映像授業との費用比較|塾の種類で変わる総額
中学受験の準備には、大手の集団指導塾のほかに、個別指導塾や映像授業を活用する方法もあります。塾の種類によって、費用のかかり方は大きく異なります。
それぞれの特徴は、次のとおりです。
- 集団指導塾:受験に向けたカリキュラムが体系的に組まれている。講習や模試を含めると、学年が上がるにつれて費用が増える
- 個別指導塾:子どもの理解度や苦手に合わせて授業を受けられる。1回あたりの授業料は高めになりやすいが、受講する科目や回数を調整できる
- 映像授業・オンライン教材:比較的費用を抑えやすい。一方で、学習の進み具合を家庭で管理する必要がある
個別指導は、苦手な科目や単元を補強する目的で、集団塾と併用されることも多くあります。前述の民間調査でも、個別塾の塾代総額の平均は約122万円で、集団塾の約183万円より低い結果となっています。その理由の一つとして、必要な科目や単元だけを受講する使い方が多いことが考えられます。
注意したいのは、集団塾に通いながら、6年生になって個別指導や家庭教師を追加するケースです。こうした併用によって、塾代の総額が想定を大きく上回ることがあります。子どもの学習状況や性格に合った塾を選ぶとともに、併用する可能性も含めて予算を考えておきましょう。
夏期講習・冬期講習・直前講習でかさむ季節費用の実態
塾代の中で、特に想定外になりやすいのが、季節講習の費用です。中学受験の塾では、通常の授業とは別に、春期・夏期・冬期の講習や、正月の特訓、入試直前の講座などが設けられています。
季節費用がかさみやすい理由として、次のような点が挙げられます。
- 講習の費用は、毎月の月謝とは別に、まとまった金額で請求される
- 学年が上がるほど、講習の日数や時間が増え、費用も高くなる
- 6年生では、夏期講習に加えて、志望校別の特訓や直前講座が重なる
- 塾から受講を勧められる講座が多く、選択講座でも受講せざるを得ないと感じやすい
特に6年生の夏期講習は、受験生にとって重要な時期とされ、1回の講習で数十万円になることもあります。同じ民間調査でも、中学受験で想定外だった費用として、夏期・冬期などの特別講習の費用を挙げる保護者が多く見られました。
季節費用で慌てないためには、年間の予定を早めに確認し、講習の時期に合わせて資金を準備しておくことが大切です。毎月の月謝とは別に、講習のための積み立てをしておくと、まとまった請求があっても家計への負担を和らげることができます。
※塾の料金は年度ごとに改定されるため、本文の金額はあくまで目安です。最新の料金は各塾の公式サイトや説明会で確認してください。
受験料・入学手続き・入学後にかかる費用
塾代と並んで準備しておきたいのが、受験する学校に支払う費用と、合格した後に必要になる費用です。特に入学後の学費は、受験の費用よりも長い期間にわたって続くため、進学先を考える上で欠かせない視点になります。ここでは、受験料から入学後6年間の学費までを順に整理します。
受験料の相場と、複数校を受験したときの総額
中学受験の受験料は、私立中学校の場合、1回あたり2万〜3万円程度が一般的です。一方、公立中高一貫校の検査料は数千円程度のところが多く、私立に比べて大きく抑えられています。いずれも学校によって金額は異なるため、募集要項で確認しておきましょう。
私立中学校を受験する場合、第一志望の学校だけでなく、併願校を含めて複数の学校や試験日程に出願することが多くあります。前述の民間調査では、受験する学校数の平均は2.6校、受験料の総額の平均は約5万7,000円でしたが、首都圏の中学受験では、同じ学校の複数の日程も含めて5〜6回程度出願する家庭もあります。
たとえば、1回2万5,000円の受験料で6回出願した場合、受験料だけで15万円になります。
- 1回あたりの受験料:2万〜3万円程度(私立中学校)
- 6回出願した場合の受験料:12万〜18万円程度
- このほか、受験当日の交通費や、遠方の学校を受験する場合の宿泊費もかかる
学校によっては、複数回の試験にまとめて出願すると受験料が割引になる制度を設けている場合もあります。出願する学校と日程を決める際には、受験料の総額もあわせて確認しておくと安心です。
入学金・制服代など合格後の費用と、併願校の手続き費用
合格した後は、入学手続きとして、入学金などをまとめて納める必要があります。私立中学校の入学金は、20万〜30万円程度の学校が多く、これに加えて、制服や体操服、通学かばん、教材などの購入費が必要になります。制服や学用品の費用は学校によって幅がありますが、数万円から十数万円程度を見込んでおくとよいでしょう。
注意したいのが、併願校の入学手続きです。第一志望の学校の合格発表より前に、併願校の入学手続きの締め切りが来ることがあり、その場合は、進学するかどうか分からない段階で入学金を納めなければなりません。私立中学校の入学金は、入学を辞退しても返還されないことが一般的です。
こうした負担を抑えるために、確認しておきたい点は次のとおりです。
- 併願校に、入学金の納入を一定期間待ってもらえる延納制度があるか
- 入学金を分けて納められる分納制度があるか
- 第一志望校の合格発表日と、併願校の手続き締め切り日の関係
出願校を決める段階で、合格発表日と手続き締め切り日を一覧にしておくと、入学金を二重に支払うリスクを事前に把握できます。
合格後も続く、私立中学・高校6年間の学費
中学受験の費用を考える上で、最も大きいのは、実は受験までの費用ではなく、合格した後に続く学費です。文部科学省の「子供の学習費調査」(令和5年度)によると、1年間の学習費総額は、次のようになっています。
- 公立中学校:約54万2,000円
- 私立中学校:約155万7,000円
- 公立高校(全日制):約59万8,000円
- 私立高校(全日制):約102万6,000円
この数字をもとに6年間の総額を単純に計算すると、公立中学校と公立高校に進んだ場合は約342万円、私立中学校と私立高校に進んだ場合は約775万円となり、その差は400万円以上になります。
ただし、高校の授業料については、2026年4月から高等学校等就学支援金の所得制限が撤廃され、私立高校についても支給の上限額が年額45万7,200円に引き上げられています。そのため、私立の中高一貫校に進学した場合でも、高校段階の授業料の負担は、この調査時点より軽くなる可能性があります。授業料以外の施設費や修学旅行費、部活動の費用などは引き続き自己負担となるため、学校ごとの費用を確認しておきましょう。
中学受験は、合格がゴールではありません。受験までの費用と、合格後6年間の学費を合わせた総額で考えることが、家計に無理のない進路選びにつながります。次の章では、こうした費用を計画的に準備するための方法を紹介します。
参考:【令和5年度子供の学習費調査結果のポイント】 令和8年1月16日 1 学習費全体の状況 (
中学受験の費用を計画的に準備するための家計戦略
ここまで見てきたように、中学受験には、受験までの塾代や受験料に加えて、合格後の入学金や6年間の学費まで、まとまった費用がかかります。ここでは、これらの費用を無理なく準備するための考え方と、公立中高一貫校という選択肢、そして家族で費用について話し合う方法を紹介します。
いつから・いくら貯めればいい?逆算で考える準備のしかた
中学受験の費用を準備するときは、必要になる時期と金額から逆算して考えることが大切です。これまでの内容をもとにすると、私立中学校を目指す場合の費用は、おおむね次のように分けて考えることができます。
- 受験までの塾代:3年間で200万〜240万円程度
- 受験料:複数校に出願した場合で十数万円程度
- 合格後の入学金・制服代など:30万〜40万円程度
- 入学後の学費:私立中学校で年間約155万7,000円
塾代は、4年生から6年生までの3年間に分けて支払うため、毎月の家計から支払う部分と、講習費などのまとまった出費に備えて貯めておく部分を分けて考えると、準備がしやすくなります。
一方、入学金や入学後の学費は、受験の結果が出た直後から必要になります。塾代の支払いが本格的に始まる前に、入学時の費用を先に準備しておくと、受験期の家計に余裕が生まれます。たとえば、入学時の費用として100万円を準備したい場合、小学1年生から4年生になるまでの3年間(36か月)で貯めるとすると、毎月約2万8,000円の積み立てが目安になります。
準備の方法としては、受け取った児童手当を生活費に使わず積み立てておくことや、毎月決まった額を教育費専用の口座に先取りで貯めることが基本になります。中学受験までの期間は数年と短いため、値動きのある投資で増やそうとするよりも、元本割れの心配がない預貯金を中心に、着実に準備することが現実的です。
公立中高一貫校という選択肢と費用の違い
中学受験というと、私立中学校を思い浮かべる方が多いかもしれませんが、公立の中高一貫校を受検するという選択肢もあります。たとえば宮崎県内では、五ヶ瀬中等教育学校、宮崎西高等学校附属中学校、都城泉ヶ丘高等学校附属中学校の3校が、県立の中高一貫校として設置されています。
公立中高一貫校の大きな特徴は、学費が公立中学校と同じ水準であることです。私立中学校のような高額な授業料はかからず、中学校から高校までの6年間を通じた教育を受けることができます。ただし、寮生活を前提とする学校では寮費がかかるなど、学校によって別途必要になる費用もあるため、事前に確認しておきましょう。
費用の面での主な違いは、次のとおりです。
- 受検の費用:検査料は数千円程度のところが多く、私立中学校の受験料より大きく抑えられる
- 入学後の学費:公立中学校と同じ水準で、私立中学校に比べて年間の負担が小さい
- 受検対策の費用:適性検査や面接など、私立とは異なる形式の対策が必要になる
一方で、公立中高一貫校は募集人数が限られており、倍率が高くなることもあります。宮崎県の3校でも、令和8年度の選抜では、宮崎西高等学校附属中学校が2.96倍、都城泉ヶ丘高等学校附属中学校が3.10倍となっています。入学者は適性検査などによって選ばれるため、私立中学校の学力試験とは異なる準備が必要です。
宮崎県の3校では、令和9年度(2027年4月入学)の選抜から作文が廃止され、適性検査Ⅰを3校共通の内容、適性検査Ⅱを各学校の特色を生かした内容で実施することになりました。このように選抜の方法は変わることがあるため、受検を考える場合は、学校の説明会や選抜要綱で、最新の選抜方法や時期を早めに確認しておきましょう。
私立中学校と公立中高一貫校のどちらが合っているかは、学校の教育方針や通学のしやすさ、子どもの適性によっても変わります。費用だけでなく、子どもがどのような環境で学びたいかもあわせて考えることが大切です。
費用対効果を家族で話し合う|子どもをお金の学びに巻き込む方法
中学受験は、家族にとって大きなお金と時間をかける選択です。だからこそ、費用について親だけで決めるのではなく、子どもも含めて家族で話し合うことが大切です。
話し合いでは、次のような点を家族で確認してみましょう。
- なぜ中学受験をしたいのか、受験を通じて何を得たいのか
- 受験までの費用と、合格後6年間の学費の総額はどのくらいか
- その費用を支払っても、家計に無理がないか
- 公立中学校に進む場合と比べて、どのような違いがあるか
子どもにすべての金額を伝える必要はありませんが、年齢に応じて、「塾や受験には、これくらいのお金がかかっている」という大まかな見通しを共有することは、子ども自身が受験を自分ごととして考えるきっかけになります。
また、費用対効果という視点は、お金をかけたかどうかではなく、そのお金で何を得たいのかを考えることでもあります。進学先の学校で何を学び、どのような経験をしたいのかを子どもと話し合うことは、お金の使い方を目的から考える、実践的な学びにつながります。
中学受験の費用を家族で見える化し、納得して選択すること。それが、受験の結果にかかわらず、子どもにとっても家族にとっても後悔の少ない経験にしていくためのポイントです。
参考:【令和5年度子供の学習費調査結果のポイント】 令和8年1月16日 1 学習費全体の状況 (
まとめ:中学受験の費用を見える化して、後悔しない選択を家族でしよう
中学受験の費用は、塾代だけでも3年間で200万〜240万円程度が目安となり、季節講習や模試代、複数校の受験料、合格後の入学金も重なります。さらに私立中学校に進学すると、入学後も年間約155万7,000円の学習費がかかるため、受験までと入学後を合わせた総額で考えることが大切です。
必要な時期と金額から逆算して早めに準備を始め、公立中高一貫校という選択肢も含めて検討しましょう。費用の見通しを家族で共有し、何のために受験するのかを子どもと話し合うことが、家計に無理のない、納得のいく進路選びにつながります。




