「推し活くらい、青春の一部だから」——そう見守りつつも、子どものグッズやチケットへの出費が想像以上に膨らんでいて、驚いた経験はありませんか。
LINEリサーチの調査によれば、女子高校生・女子大学生の約8割が「今、推しがいる」と回答しており、女子大学生では年間の推し活支出が10万円以上という人が2割台後半にのぼるというデータもあります。推し活は、応援する気持ちや仲間とのつながりを育む、決して悪いものではありません。しかし、際限なく課金が続いてしまうと、生活費や将来の貯蓄を圧迫してしまうこともあります。
この記事では、推し活の出費が膨らみやすい理由と、親子で無理なく決められる課金ルールの作り方をわかりやすく解説します。読み終える頃には、推しを楽しむこととお金を守ることを両立させるヒントが見つかっているはずです。
推し活でお金を使いすぎてしまう子どもが増えている理由
「うちの子も、いつのまにかこんなに使っていたなんて」——推し活の出費は、他の課金と違い、好きだから仕方ないと見過ごされがちな面があります。まずは、なぜこれほどお金を使いすぎてしまうのか、その背景を整理していきましょう。
スマホ課金やグッズ購入はなぜ止まらないのか
「もう少しだけ」——推し活の出費が止まらなくなる背景には、いくつもの購入経路が重なっているという構造があります。ここでは、その具体的な内訳を見ていきましょう。
推し活と一口に言っても、グッズ購入、ライブ・イベントのチケット代、CDやデジタルコンテンツの購入、そしてSNSやライブ配信での投げ銭など、お金を使う場面は多岐にわたります。インテージの調査によれば、国内アイドルへの年間平均支出は約4.8万円、ミュージシャンには約3.4万円というデータもあり、対象や活動の熱量によって金額に大きな幅があります。
- グッズやコンテンツは「限定」「特典付き」など、購入を後押しする演出が多く使われている
- SNSでの投げ銭は、以前の記事でも紹介したとおり、応援したい気持ちが繰り返しの支援につながりやすい
- 複数の購入経路(グッズ・イベント・配信サイトなど)が同時に存在するため、合計金額を把握しにくい
一つひとつの購入は小さな金額でも、複数の経路から同時多発的に支出が発生することが、推し活特有の出費の膨らみやすさにつながっています。
参考:財務省「コラム 経済トレンド137 推し活〜若年層を中心に急成長する消費形態〜」
子どもがお金の感覚をつかみにくい3つの構造的な原因
好きだから使うという気持ちの強さだけでなく、お金の感覚をつかみにくくする構造的な要因も存在します。
- 応援という文脈が、冷静な判断を後回しにさせる:推し活の消費には応援したい・支えたいという利他的な気持ちが伴うため、単なる買い物以上に、金額を意識しにくくなる傾向がある
- キャッシュレス決済で使った実感が薄れる:グッズの通販や投げ銭の多くはクレジットカードやスマホ決済で完結するため、現金のように手元から減っていく感覚を持ちにくい
- SNSでの共有が、支出の当たり前化を後押しする:友人や同じ推しを応援する仲間の投稿を通じて、購入や課金が日常的な行動として見えやすくなる
これらはいずれも、子どもの浪費癖の問題というより、推し活という消費形態そのものに組み込まれた構造です。この理解があるかどうかで、次に紹介する対応の仕方も変わってきます。
推し活トラブルは禁止では解決しない
「推し活なんてやめなさい」——この対応は、多くの場合、逆効果になります。
高校生の89%が「推し」がいると回答した調査結果もあるように、推し活は今や多くの子どもにとって、日常生活や友人関係の一部になっています。これを一方的に禁止してしまうと、子どもは反発を強めるか、あるいは親に隠れて課金や購入を続けるという、より把握しにくい状況を生み出しかねません。
- 推し活そのものを否定すると、子どもの居場所や友人関係にまで影響が及ぶ可能性がある
- 禁止された分、こっそり隠れて課金するようになり、かえって実態が見えなくなる
- 好きなものを楽しむこと自体は、ウェルビーイング(心の充実感)につながるという指摘もある
大切なのは、推し活をやめさせることではなく、無理のない範囲で楽しむためのルールを一緒に作ることです。次の章では、その具体的な方法を紹介していきます。
参考:財務省「コラム 経済トレンド137 推し活〜若年層を中心に急成長する消費形態〜」
参考:高校生の89%は「推し」がいる──日本のアイドルが最多、VTuberや配信者は9% – KAI-YOU
親子で取り決める課金ルールの作り方と推し活予算の決め方
推し活を楽しみながら、お金を使いすぎないようにするには、あらかじめ具体的な予算とルールを親子で決めておくことが効果的です。ここでは、その具体的な手順を紹介します。
まず月いくらまでOK?推し活予算の目安と決め方ステップ
「いくらまでなら使っていいのか」——この上限を曖昧にしたままでは、無限に支出が膨らんでしまいます。
- お小遣い・アルバイト収入など、子どもが自由に使える金額の総額を確認する
- その中から、生活必需品(交通費・昼食代など)や貯蓄に回す分を、あらかじめ差し引く
- 残った金額の中で、推し活に使ってよい上限額を決める
一般的な目安として、自由に使えるお金のうち、まず一定額を貯蓄に回し、残りの中から推し活の予算を設定するという考え方が分かりやすいでしょう。金額そのものに正解はなく、家庭の状況や子どもの年齢によって調整が必要です。大切なのは、使える上限があるという感覚を、具体的な金額として持たせることです。
課金・グッズ・イベント費を仕分けする推し活費シートの使い方
「グッズにいくら、イベントにいくら使ったか、把握できていない」——これは、推し活の出費が膨らみやすい大きな原因の一つです。
そこでおすすめなのが、推し活にかかる費用を項目別に記録する推し活費シートです。ノートやスプレッドシート、家計簿アプリなど、使いやすい形式で構いません。
- グッズ費:アクリルスタンド、缶バッジなどの物販にかかった金額
- イベント費:ライブ・コンサートのチケット代、遠征にかかる交通費・宿泊費
- デジタル課金費:投げ銭、有料コンテンツ、サブスクリプションなど
- その他:CDやDVD、書籍などの購入費
記録の運用方法としては、次のような流れがおすすめです。
- 購入するたびに、日付・項目・金額を記録する習慣をつける
- 月末に、項目ごとの合計と、決めておいた予算上限を照らし合わせる
- 「今月はイベント費が多かったから、来月はグッズを控えよう」など、翌月の計画に反映させる
この見える化の作業は、以前の記事で紹介したお小遣い帳や家計簿の考え方と同じです。推し活という子どもにとって身近で関心の高いテーマだからこそ、記録する習慣が身につきやすいという利点もあります。
親が一方的に決めず子どもが納得するルール設計のポイント
「この金額までね」と親が一方的に決めてしまうと、子どもは納得感を持てず、ルールが形骸化してしまうことがあります。
- 子ども自身に、推し活にかけたい金額とその理由を、先に話してもらう
- その希望と、家庭で準備できる金額とのギャップを、一緒にすり合わせる
- なぜこの金額に決まったのかを、子ども自身が説明できる状態にする
例えば、「イベントには年に2回まで行きたい」という子どもの希望があれば、その費用を優先的に確保し、代わりに日常的なグッズ購入は控えめにするなど、子どもの一番大切にしたいポイントを尊重した配分を考えることができます。
一方的なルールの押し付けではなく、話し合いを通じて子ども自身が自分で決めたルールだと感じられるようにすることが、無理なく守られるルール作りの鍵になります。次の章では、この予算管理を通じて、推し活をお金の教育にどう活かしていくかを紹介します。
推し活をお金の勉強に変える!親子で使えるお金管理の方法
推し活の予算とルールが決まったら、それを単なる制限で終わらせず、実践的なお金の教育に発展させていくことができます。最後に、その具体的な方法を紹介します。
お小遣い帳・推し活家計簿で使う・貯める・選ぶを体験させる
前の章で紹介した推し活費シートは、記録するだけでなく、使う・貯める・選ぶという3つの判断を実践する教材として活用できます。
- 使う:限られた予算の中で、何にお金を使うかを自分で決める経験
- 貯める:「来月の大型イベントのために、今月は控えめにしておく」といった、目的を持った貯蓄の経験
- 選ぶ:「グッズとイベント、両方は無理だから、どちらを優先するか」を判断する経験
こうした判断を日々の記録に落とし込む工夫として、次のような取り組みも効果的です。
- 「イベントに行きたいから、今月はグッズを1つ我慢する」など、優先順位をつける経験を積ませる
- 記録をつけることで、なんとなく使ったではなく選んで使ったという実感を持たせる
- 月末の振り返りを、単なる反省ではなく、来月どう配分するかを考える前向きな時間にする
推し活という、子どもにとって関心の高いテーマだからこそ、使う・貯める・選ぶという金銭管理の基本を、楽しみながら実践できるという利点があります。
「推し活費が足りない」と言われたときの親の対応と伝え方
「お小遣いが足りないから、もっとちょうだい」——こう言われたとき、どう応じるかが、金銭教育の分かれ目になります。
まず大切なのは、安易に追加のお金を渡さないことです。決めた予算の中でやりくりする経験こそが、金銭感覚を育てる機会だからです。
- なぜ足りなくなったのかを、一緒に推し活費シートを見ながら確認する
- 来月の予算を前借りするのではなく、来月分を今月に回すなら来月は減らすというルールを徹底する
- どうしても必要な出費(重要なイベントのチケットなど)であれば、アルバイトや不用品の販売など、自分で稼ぐ方法を一緒に考える
足りないなら渡すを繰り返してしまうと、予算を守る意味そのものがなくなってしまいます。不足した経験そのものを、次はどう配分するかを考える学びの機会として活用しましょう。
欲しいものを我慢する力=将来の資産形成につながる理由
「今すぐ欲しい」という気持ちを一旦抑え、優先順位をつけて選択する経験は、実は将来の資産形成に直結する力です。
投資や貯蓄において成功する人に共通する特徴の一つが、目先の欲求よりも、長期的な目標を優先できる力だとされています。推し活の予算管理を通じて、「今月はグッズを我慢して、来月の遠征費用に回す」という判断を重ねることは、まさにこの力を実践的に鍛える機会になります。
- 今すぐ欲しい気持ちと、もっと大切な目標のために我慢する判断を、繰り返し経験させる
- この経験は、将来の貯蓄・投資における今使うか、将来のために取っておくかという判断力の土台になる
- 推し活を通じて身につけた選ぶ力は、進学費用や将来の大きな買い物の場面でもそのまま活きる
推し活は、単なる娯楽の消費ではなく、限られた資源の中で何を優先するかを学ぶ、身近で実践的な金融教育の教材にすることができます。好きなものを楽しみながら、将来にわたって役立つお金の感覚を育てていきましょう。
お金を使いすぎない推し活を続けるために親子でできる習慣づくり
ルールや予算を決めても、それを継続する仕組みがなければ、いつの間にか形骸化してしまいます。最後に、無理なく続けられる習慣づくりと、推し活を通じたお金の価値観の育て方を紹介します。
毎月末に5分でできる推し活振り返りの進め方
「振り返りが面倒で、続かなかった」——これはよくある失敗パターンです。だからこそ、短時間で終わる、シンプルな振り返りの型を決めておくことが継続のコツです。
- 今月使った金額を確認する(推し活費シートを見ながら、1分程度)
- 予算内に収まったか、超えてしまったかを確認する(超えた場合は、その理由を一言で振り返る)
- 来月、特に使う予定のイベントやグッズがあるか確認する(先の予定に合わせて配分を調整する)
この3ステップであれば、5分程度で完了します。反省会のような重い雰囲気にせず、次への準備として前向きに行うことがポイントです。毎月同じタイミング(お小遣いを渡す日など)に組み込んでおくと、自然な習慣として定着しやすくなります。
「無課金でも楽しめる推し方」を一緒に探すコミュニケーション術
お金をかけることだけが、推し活の楽しみ方ではありません。この視点を、親子で一緒に広げてみましょう。
- SNSで公式が発信する無料コンテンツ(配信、投稿など)を一緒にチェックしてみる
- 「推し」に関する感想や考察を、ノートやSNSで発信する楽しみ方を紹介する
- 友人と「推し」について語り合う時間そのものを、楽しみの一つとして捉え直す
こうした無料の楽しみ方を広げるうえで、次のような声かけも役立ちます。
- お金をかけないと応援したことにならないという思い込みがないか、一度話してみる
- 無料で楽しめる方法を見つけたときは、それも一つの賢い推し活として認めてあげる
- お金をかけた分だけ愛情が伝わるという考え方ではなく、自分にできる範囲で応援するという視点を伝える
お金をかけずに楽しむ工夫を一緒に見つける経験は、推し活に限らず、将来のあらゆる消費行動において、本当に必要な支出かを考える習慣につながります。
子どもの推し活を否定せず、お金の価値観を育てる親の言葉がけ
「そんなものにお金をかけて」——この一言は、子どもとの信頼関係を損ねてしまう可能性があります。
大切なのは、推し活そのものへの価値観は否定せず、お金の使い方についてだけ、一緒に考える姿勢を持つことです。
- 「推し活はやめなさい」ではなく「一緒に、無理のない楽しみ方を考えよう」と伝える
- 「好きなものに使うお金があるのはいいことだね」と、まず気持ちを肯定してから、予算の話をする
- 子どもが予算内でうまくやりくりできたときは、その工夫や我慢をきちんと認め、言葉にして伝える
推し活は、多くの子どもにとって、日々の楽しみや心の支えになっている大切な活動です。その気持ちを尊重しながら、お金との付き合い方を一緒に考えていくという姿勢こそが、否定せずに金銭感覚を育てる効果的なアプローチです。この経験の積み重ねが、将来、限られた資源の中で何を大切にするかを、自分で判断できる力へとつながっていきます。
まとめ:推し活は課金ルールづくりが子どもの金銭感覚を育てる
推し活でお金を使いすぎてしまうのは、子どもの意志の弱さが原因ではありません。応援したいという気持ちの強さや、キャッシュレス決済による使った実感の薄れなど、いくつもの要因が重なって支出が膨らみやすくなっています。だからこそ、頭ごなしに禁止するのではなく、親子で無理のない予算とルールを一緒に決めることが何より大切です。
推し活費シートで記録をつけ、月末に5分の振り返りを習慣にするだけで、なんとなく使ったから選んで使ったという実感に変わっていきます。推し活そのものへの気持ちを否定せず、お金の使い方について一緒に考える姿勢こそが、子どもとの信頼関係を守りながら金銭感覚を育てる鍵になります。




