奨学金は借金?返済額・利息・リスクをわかりやすく解説

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「奨学金を借りれば大学に行ける。でも実際にいくら返すことになるのか、ちゃんと計算したことがなくて不安」という経験はありませんか?

進学を控えた子どもを持つ親御さんの多くが、奨学金についてなんとなくわかっているけど正確には把握していないという状態にあります。無利子なら安心・月々の返済は社会人になってからだから今は考えなくていいという感覚のまま借りてしまい、返済が始まってから金額の重さに初めて気づく——そういうケースが実際に多く報告されています。

奨学金はもらえるお金ではなく、借りるお金です。この当たり前の事実を、借りる前に子どもと一緒に正確に理解しておくことが、将来の返済トラブルを防ぐ重要な準備になります。

この記事では、次の3つを解説します。

  • 奨学金の種類(給付型・貸与型)と、利子ありとなしで返済総額がどれだけ変わるかの具体的な数字
  • 月々の返済額・返済期間・総支払額という借りる前に確認すべき数字の計算方法
  • 奨学金を借りる前に親子で確認すべきポイントと、返済が困難になったときの対処法

塾を経営していると、奨学金のことをよく調べずに借りてしまったという話を卒業生から聞くことがあります。知っていれば選択肢が広がったのに、という場面を何度も見てきました。奨学金は人生で最初に経験する大きな借金になることがほとんどです。だからこそ、借りる前に正確な知識を持っておくことが大切だと思っています。

奨学金は「もらえるお金」じゃない?多くの親子が知らない教育費のリアル

奨学金を借りれば大学に行けるという感覚は正しいですが、借りるという言葉の重さを正確に理解しているかどうかが、後々の返済生活を大きく左右します。まず奨学金の全体像を把握することから始めましょう。

給付型と貸与型の違い——8割以上が「返す必要がある」奨学金を使っている

奨学金には大きく「給付型」と「貸与型」の2種類があります。

給付型は返済不要の奨学金です。日本学生支援機構(JASSO)の給付型奨学金は、住民税非課税世帯またはそれに準ずる世帯の学生を対象としており、進学先や世帯収入によって支給額が異なります。返す必要がない分、対象者・支給額ともに制限があります。

貸与型は返済が必要な奨学金です。さらに無利子の「第一種」と有利子の「第二種」に分かれており、多くの学生が利用しているのはこの貸与型です。JASSOの令和4年度学生生活調査によると、大学生のおよそ2人に1人が何らかの奨学金を利用しており、そのうち奨学金受給者の約8割が貸与型を受け取っているという現状があります。

参考:日本学生支援機構「令和4年度学生生活調査結果」

つまり奨学金を借りたという多くのケースは、将来必ず返さなければならない借金をしたという状態です。給付型という言葉を知っていても実際には貸与型を利用しているという認識のズレが、後からこんなに返すのかという驚きにつながります。

借りた金額はいくらになる?利子も含めた返済総額をシミュレーションで確認

月いくら借りるかという感覚で奨学金を選ぶ人は多いですが、大切なのは最終的にいくら返すかという総返済額です。実際に数字で確認してみましょう。

第一種(無利子)の場合

自宅通学・私立大学で月額5万4,000円を4年間借りた場合、借入総額は約259万円です。無利子のため返済総額も約259万円で、一般的に10〜20年かけて返済します(返済額・期間は条件によって異なります)。

第二種(有利子)の場合

月額8万円を4年間借りた場合、借入総額は384万円になります。第二種奨学金の利率は貸与終了月に決定するため、借りるときには正確な利率はわかりません。2025年3月に貸与終了した場合の利率は1.641%であり、返済期間15年という条件で計算すると、利子を含めた総返済額は約435万円程度になります。 

利率は市場金利の動向によって変動するため、最新の情報はJASSOの公式シミュレーションでご確認ください。

参考:日本学生支援機構「奨学金貸与・返還シミュレーション」

参考:【2026年最新】日銀金融政策決定会合とは|日程・スケジュールや日銀が発表する文書を解説

月々の返済額をイメージする

384万円を15年で返済する場合、月々の返済額は利率によって異なりますが、2万2,000〜2万5,000円程度になります。社会人1年目の手取り収入が約18〜20万円程度とすると、収入の10%以上が毎月奨学金の返済に消えるという計算です。

「なんとかなる」が一番危険——返済が社会人生活に与える実際の影響

大学を出て就職すれば返せるという感覚で借りた結果、社会人になってから返済の重さに初めて気づくというパターンが後を絶ちません。数字で見えていなかったものが、毎月の口座引き落としという現実として現れる瞬間です。

手取り収入と返済額の現実

2024年の大学卒初任給平均は約24万8,000円(厚生労働省「賃金構造基本統計調査」)で、社会保険料・所得税を引いた手取りは約19〜20万円程度になります。そこから家賃・食費・光熱費・通信費という生活費を差し引くと、奨学金の返済に充てられる余裕は思っているより少ないのが現実です。

参考:厚生労働省「賃金構造基本統計調査」

返済が滞るとどうなるか

返済が3か月以上滞ると、信用情報機関に延滞の記録が残ります。この記録は一定期間残るため、住宅ローンやクレジットカードの審査に影響する可能性があります。社会人になってから考えようという先送りが、将来の大きな選択肢を狭めるリスクにつながります。

「なんとかなる」という感覚の正体

社会人になれば収入が増えるから大丈夫という楽観は、具体的に計算していないという状態から来ていることが多いです。月々2万円以上の返済が10〜20年続くという現実を数字で見た上でそれでも借りると判断するのと、なんとなく大丈夫だろうと借りるのでは、同じ選択でも意味がまったく違います。

借りる前に計算する習慣を持つことが、奨学金との正しい向き合い方の出発点です。

なぜ教育費の話が親子でできないのか——話し合いを阻む原因とは?

奨学金の仕組みを知ることと、実際に家庭で話し合えることは別の問題です。大切だとわかっているのに、なぜか話せないという状況には、いくつかの共通した原因があります。その原因を整理することが、話し合いへの最初の一歩になります。

「子どもにお金の心配をさせたくない」という親の遠慮が招くすれ違い

教育費の話を避ける理由として多いのが、子どもにお金の心配をさせたくないという親心です。この気持ちは自然で、理解できます。でもこの遠慮が、意図しないすれ違いを生むことがあります。

子どもは親が思っているより、家庭の経済状況を敏感に察知しています。なんとなく苦しそうだな・進学のことを話すと親の表情が曇るという空気を感じながら、でも具体的な話をされないまま育つと、聞いてはいけないことなのかもしれないという感覚が生まれます。

正確な情報がない状態で子どもが察するのは、多くの場合、実際より深刻なイメージです。うちはお金がなくて大学に行けないのかもしれないという誤解が生まれることもあります。心配させたくないという親の遠慮が、逆に子どもを余計に心配させているという逆説がここにあります。

お金の話をすることと、心配させることは、本来イコールではありません。うちの家計はこういう状況で、奨学金を使う可能性があるよ、一緒に考えようという話は、子どもを不安にさせる話ではなく、現実を一緒に準備する話です。この違いを意識するだけで、話し合いへのハードルが下がります。

学校では教えてくれない——子ども自身がお金の仕組みを知らないから怖い

親だけでなく、子ども側にも話し合いを難しくする原因があります。奨学金・利子・返済という言葉の意味をそもそも理解していないため、話を聞いても実感が持てないという問題です。

学校の授業で奨学金の仕組みを体系的に学ぶ機会は、現在の教育カリキュラムではまだ十分ではありません。奨学金という制度があるという知識はあっても、第一種と第二種の違い・利子とは何か・総返済額がいくらになるかという具体的な内容まで理解している高校生は少ないのが現実です。

知識がない状態でお金の話をされると、子どもは難しそう・よくわからないという感覚になります。親が一生懸命説明しようとしても、受け取る側の土台がなければ伝わりません。これが、話したつもりなのに子どもに響かなかったという状況を生みます。

解決策はシンプルで、知識の話から始めることです。奨学金って何か知ってるかという問いかけから始めて、仕組みを一緒に確認するという入り方が、子どもが話に参加しやすい形になります。親が教える側・子どもが聞く側という構図ではなく、一緒に調べてみようという姿勢が、話し合いをスムーズにします。

いつ話す?何から話す?「切り出し方がわからない」を解決するヒント

大切な話だとわかっている、でも切り出すタイミングも話の始め方もわからないという状態が、話し合いを先送りにし続ける最も現実的な原因です。完璧なタイミングで・完璧な形で話さなければいけないという思い込みが、最大の障壁になっています。

タイミングについて

完璧なタイミングはありません。ただ高校2年生の春ごろという目安は持っておくと実用的です。大学受験の志望校が固まり始める前に、進学にかかる費用と奨学金の話をしておくことで、志望校選びの段階から現実的な判断ができるようになります。

日常の中で切り出すきっかけとして使いやすいのは、ニュースや知人の話題です。奨学金の返済が大変というニュースを見たんだけど、うちはどうしようかと思って、という入り方が、自然に話題を始めるきっかけになります。

何から話すかについて

最初から総返済額・利子計算という数字の話をすると、子どもが難しい話が始まったと身構えることがあります。最初の入り口は、大学に行きたいか・どんな大学を考えているかという子どもの希望の話から始めることが有効です。希望を聞いた上で、そのためにかかるお金はこういう仕組みで用意することになりそうだよという流れが、子どもが自分ごととして受け取りやすい話し方になります。

一度の話し合いで全部決めようとしないことも重要です。今日はまず仕組みだけ確認しよう・来月は実際の金額を計算してみようという分け方が、親子どちらにとっても負担の少ない進め方になります。

奨学金を賢く使うために——親子で一緒に考える教育費の選択肢

奨学金の仕組みとリスクを理解した上で、どう使うか・どう組み合わせるかという実践的な判断に進みます。奨学金は借りる・借りないの二択ではなく、家庭の状況に合わせて複数の選択肢を組み合わせることで、返済負担を最小化できます。

まず家庭の教育費予算を「見える化」する——収入・貯蓄・想定費用を整理する方法

奨学金をいくら借りるべきかという判断をする前に、そもそも家庭でいくら用意できるかという現状把握が先決です。この数字が見えていないまま奨学金の額を決めると、借りすぎる・または借りなさすぎるという判断ミスが起きます。

整理すべき数字は3つです。

①現在の教育費貯蓄額

学資保険・定期預金・NISAでの積立など、教育費として準備してきた資金の合計額を確認します。なんとなく貯めてきたという場合も、この機会に正確な金額を把握しましょう。

②進学にかかる総費用の見積もり

入学金・授業料・生活費・交通費という費用を4年間で計算します。国立大学と私立大学・自宅通学と一人暮らしで費用は大きく変わります。

JASSOの令和4年度学生生活調査によると、大学(昼間部)の年間学生生活費(学費+生活費の合計)の平均は182万4,700円です。4年間で換算すると約730万円になります。一人暮らしの場合はこれより高く、自宅通学の場合は低くなります。進学先・居住形態によって大きく異なるため、JASSOの最新の調査データと奨学金シミュレーションで実際の金額を確認することをおすすめします。

参考:令和 4 年度 学生生活調査結果

③不足額の計算

総費用から貯蓄額を引いた不足額が、奨学金やローンで補う必要がある金額になります。この不足額を正確に把握することで、いくら借りれば足りるかという判断が現実的になります。

この3つを紙に書き出すだけで、漠然とした不安が具体的な数字の問題に変わります。家庭の収支を子どもに全部見せる必要はありませんが、うちはこのくらい準備できていて、あとこのくらいが必要という概算を共有することが、親子の話し合いを具体的に進める土台になります。

奨学金・ローン・貯蓄——3つの選択肢を組み合わせて負担を減らす考え方

教育費を賄う方法は奨学金だけではありません。奨学金・教育ローン・貯蓄という3つの選択肢の特性を理解して組み合わせることで、返済総額と月々の負担を最小化できます。

奨学金

日本学生支援機構の奨学金は、金利が低い・返済期間が長いという特徴があります。第一種(無利子)が利用できるなら最優先で活用すべき選択肢です。第二種(有利子)も利用できますが、借入額が多くなると総返済額が膨らむため、必要最低限の額に抑えることが重要です。

教育ローン

日本政策金融公庫の「教育一般貸付」(国の教育ローン)は、公的な固定金利型の教育ローンです。子ども1人につき原則350万円(一定要件を満たす場合は450万円)まで借り入れができます。奨学金と異なり親が返済義務を負うため、子どもへの負担が生じないという点が特徴です。

なお金利は市場金利の動向を反映して変動します。2026年6月現在は年3.75%(固定)と以前より高い水準になっているため、申込み前に必ず公式サイトで最新の金利・条件を確認してください。

参考:教育一般貸付(国の教育ローン)

貯蓄の活用

すでに教育費として積み立ててきた貯蓄は、まず最初に使うべき選択肢です。貯蓄を先に使い、不足分を奨学金で補うという順番が、利子の支払いを最小化する基本的な考え方です。

たとえば、貯蓄で入学金と初年度授業料をカバーする→第一種奨学金を上限まで借りる→それでも不足する分を第二種奨学金で最小限補うという組み合わせが、返済負担を抑えながら進学費用を確保する現実的な設計の一例です。

どの組み合わせが最適かは家庭の状況によって異なるため、具体的な計画はJASSOの奨学金シミュレーターや、ファイナンシャルプランナーへの相談を活用することをおすすめします。

参考:JASSO「奨学金貸与・返還シミュレーション」

給付型奨学金の採用基準と申請タイミング——早めに動くほど選択肢が広がる理由

返済不要の給付型奨学金は、条件が合えば最も活用すべき制度です。しかし知らなかったから申請できなかったという機会損失が実際に多く起きています。採用基準と申請タイミングを事前に把握しておくことが、選択肢を広げる重要な準備です。

日本学生支援機構の給付型奨学金の採用基準

主な条件として、住民税非課税世帯またはそれに準ずる世帯であること・高校等での学習意欲があること・進学先が対象校であることが挙げられます。世帯収入の目安や詳細な条件は年度によって変更される場合があるため、必ず最新情報を日本学生支援機構公式サイトで確認してください。

参考:給付奨学金(返済不要) | JASSO

高校在学中からの予約採用制度

給付型奨学金には「予約採用」という制度があります。高校3年生の春から夏にかけて申請の機会があり、大学入学前に採用が内定する仕組みです。入学後に申請する「在学採用」より早く動くことで、進学の見通しが立てやすくなります。

早めに動くことが重要な理由

高校2年生の段階から、自分の家庭が給付型奨学金の対象になりうるかを確認しておくことが重要です。担任の先生や学校の進路指導室に相談することで、申請の流れと必要書類を事前に把握できます。

いざ申請しようとしたら準備が間に合わなかったという事態を防ぐためにも、早めに情報を集めて動き始めることが、子どもの進学の選択肢を広げることに直結します。

まとめ:奨学金は「将来の自分への投資」

奨学金の大半は返済が必要な借金です。利子を含めた総返済額を借りる前に計算することが、借りすぎというトラブルを防ぐ最も重要な準備になります。

親子で話し合えない原因は「心配させたくない」という遠慮と「仕組みを知らない」という知識不足の組み合わせです。高校2年生ごろを目安に、一緒に調べてみようという姿勢で切り出すことが現実的な第一歩になります。

奨学金は「借りてはいけないもの」でも「なんとかなるもの」でもありません。必要な分だけ・計画的に借りることができれば、将来への投資として機能します。月々の返済額・総支払額という数字を、進学前に親子で一度確認してみてください。